Q どのような場合に,医師免許がはく奪されるのですか?
A 重大な刑事事件を起こした場合にはく奪されるおそれがあります。
【解説】
- 重大な刑事事件を起こした場合には,医道審議会において厳しい判断がなされる可能性が高まります。特に,医師免許を利用した犯罪(麻薬等),わいせつ・性犯罪の場合は,重い処分がなされる傾向があります。重い処分とは,医師免許取消や,医業停止などがあります。戒告という処分を除いて,これらは公表されるため,取消の場合は別として停止になった場合も,医師として実質的に勤務することは困難になる場合が少なくありません。
- また,免許とは別に保険医というものがあります。保険医は都道府県ごと登録されるもので,保険診療を行う上で必要な資格のようなものです。
美容外科や歯科医師で自費専門のことをしている場合を除いて,保険診療ができないというのは医師として勤務することができないというに等しいでしょう。
この保険医としての診療に対する停止や取り消し処分というのは医師免許に対する処分に比べると,格段に多いです。 - 昨今,医師が診療報酬詐欺で逮捕されたというようなニュースを目にすることがありますが,これは,保険医取消しだけではなく,医師免許に対する重い処分が下る可能性が高いと考えられます。
なぜなら,診療報酬に対する違反についても厳罰傾向にあるからです。
保険請求できる医療機関としての取り消しがなされ,以後保険請求ができなくなる可能性もあります。
いくらなら逮捕されるのかということをたまに言う人がいますが,ケースバイケースです。100万円に満たない場合で逮捕されるケースも現実に存在します。
この場合に《故意》の有無が問題になり,ついうっかりとか、勘違いだったのに誤って自白をしてしまうケースもあります。
故意とは,《わざと》ということであり,《ついうっかり》という過失を除きます。そして,詐欺罪は,故意がなければ成立しません。過失で詐欺罪は成立しません。ここが重要なポイントになります。捜査機関等から見れば,《故意》の有無が非常に大事になります。
そこで,以下のことが問題になります。
すなわち,この際に,自白を強要されたり,誘導尋問で自白をさせられたりすることが多いのです。
要するに,警察は検挙してなんぼですし,警察に通報しようとする人についても,検挙するために《自白》があることを伝えなければなかなか刑事事件として受理してもらえません。厚生局や保険会社等も含めて,診療報酬に関連する質問で医療機関をターゲットにしている方々は,自白をとるために行動を起こしてくる可能性が高いということになります。
そして,《自白》は一回してしまうとなかなか撤回することができません。
何か問い合わせがあった場合には,あまり自分で頑張り過ぎないで,すぐに弁護士を入れてください。弁護士を窓口にすることによって,不用意に自白をすることはなくなります。 - もう一つ注意しなければならないのは,医師法等の業法違反です。多くの場合,現場の医療関係者は,そのような認識はなく(あったら問題です)、知らず知らずのうちに違反行為をしてしまっているというのが現状です。
ただ,怖いのは,その解釈は,医療現場と司法の場では結構異なる場合が多いということです。医師法違反,歯科医師法違反等は重罰が下る可能性が高いものといえます。 - 特に新たな治療法を導入する場合や,自費診療を行う場合,母体保護指定医や精神保健指定医など,その資格がなければできない医療行為をする場合、などに気が付かずに違反行為に至ってしまうこと傾向的に多いと思われます。
- 医療系は資格がなければできない仕事です。そして,資格というのは,法律によって要件効果が定められ,これに違反すると罰則も決められているのです。このような状況をしっかりと意識しながら医療が行われているということは忘れてはなりません。
以上
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