保険会社からの面談申込み
まず、このような自体が生じるのは、特に事故により保険会社に治療費を保険金として請求した場合のことでしょう。
しかし、まず、いくつかのポイントで考えてみましょう。
まず、電話の相手方は、そもそも本当に保険会社か。
言うまでもなく、医療機関は守秘義務があります。相手方が保険会社ではない、相手方が保険会社を偽っている場合に、問い合わせに応じてしまった場合には、守秘義務違反に問われる可能性があります。
私は常々、電話で回答するのは、原則として予約・予約の変更・予約のキャンセルと道案内の程度にとどめておくのがよいと思ってそのような回答してきました。
もちろん、相手方が明確であればよいですが、そうでない場合には、電話を受けること自体がリスクになります。
問い合わせ内容について
もちろん、相手方の所属(部署)・氏名・問い合わせ内容を聞くにとどめて折り返すという対応であれば、問い合わせ内容に応じたとしても、問題がない場合も少なくありません。
しかし、電話を受けるのは多くはスタッフです。その場で安易に即答することは危険だといえるでしょう。
医療機関経営者としては、電話で回答することにより得られるものよりもリスクの方が多いので、わざわざ危険を冒さない方がよいと私は思います。
問い合わせ内容を聞き折り返す場合には、①弁護士に相談してからの方がよいこと、②直ちに折り返しても大丈夫なことがあります。いずれがよいかについては、基本的な法律的なものの考え方がわかっていないと心配です。自信がない場合には、①がよいでしょう。
お気軽にお問合せを
顧問先の先生方について、最近はいろいろ質問をして下さるケースが多くなってきています。そのために、ラインやメール、携帯電話等を常備しております。
土日祝日や時間帯は一切問いません。何かが生じた場合には、いつでもご連絡ください。
もちろん、すぐに対応できない場合もあります。その場合には、できる限り早く、気が付き次第折り返します。
特に契約書等にサインする場合にはできる限りご相談ください。当然私生活上のことについても間接的に業務に影響が出ますから遠慮なくご相談ください。契約書はいざという時を規定するものではありますが、いざという時が具体的に生じる可能性が高いのであれば、そもそもその契約はすべきではありません。
保険会社の強行手段
先に述べました通り、保険会社からの急な面談予約について最近では、誰の何の件かも言わずに、ただ、面談を求めてくるケースも少なくありません。
実際に、不意を突き、言質をとろうとする窓口担当者も少なからずいます。これによって具体的な被害が生じるケースも生じております。
保険会社から言ってきているのだから従わざるを得ないということはありません。おかしいなと思ったらすぐにお問合せいただけますと、最悪の事態を防ぐことができるものと思います。
最悪のケース
金銭請求をする相手が保険会社です。健康保険であれば、間違いがあれば返戻となり、よほど悪質にならなければ詐欺事件となることはないのではないかと考えられます(根拠があるわけではありませんが)。
しかし、損害保険等は違います。おかしい請求があれば、1円でも詐欺だと言ってきます。
詐欺罪が成立するためには、簡単に言えば詐欺の客観面と、騙そうという意思を保険会社は証明しなければなりません。
外観的に誤った請求があれば、当然詐欺の客観面は満たすことは多いです。しかし、騙そうという意思は、本人が自白をしない限り、内心の問題なので、証明することは困難です。
そこで、直接面談を申し込んで、《わざと誤った請求をした》との自白をとろうとしてくるのです。いったんこれを認めてしまったら、後からこれを覆すのはとても困難です。
これが最悪のケースです。主観面《わざと》と判断されたら金額にもよりますが、たとえ実際には間違っただけであっても、不正請求として刑事訴追されてしまう可能性もあります。
このあたりは知識武装をし、あまり自分で頑張らないことが必須です。
まとめ
特に事故等の際に、治療費を持ってくれる保険会社は非常にありがたい存在です。他方において、適切な保険請求でない場合には、昨今の保険会社は、対応を厳しくしています。
もちろん、多くの先生方はついうっかりだと思います。しかし、保険会社のスタンスによっては、ついうっかりでは済まされないケースもたくさんあります。
医療の財源は有限です。これと同様にして損害保険の財源も有限です。これから先の医療機関経営においては、これらの有限な財源と向き合っていく必要があるのではないかと思います。
以上
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