医療事件の裁判官ってどんな人なの?
医療事故が起き,紛争となった場合,患者さん側との話合いによる解決ができないと裁判により決着をつけることになります。裁判では,執刀医の手技にミスはなかったか,術前の説明は十分だったか,投薬管理は適切だったか等様々な形で,医療機関側の責任の有無が争われます。
医療訴訟では,患者さん側において,医療機関側の落ち度を立証しなければならず,医療機関側は,患者さん側の立証が成功しないよう反論を尽くすことになります。そして,最後は,裁判官が,出そろった事実や証拠を基に法的責任の有無を判断します。
医療訴訟の場合は,他の一般的な事件と異なり,医療集中部という裁判所の特定の部署に事件が集められて,3人の裁判官により,審理が進められることになります(医療集中部がない裁判所もあります)。これは,医療という分野が極めて専門性が高く,審理の難易度が高いため,事件を特定の部署に集約させることで,審理の効率化・迅速化,審理の専門性を高めることを目的とするものです。
実際,医療集中部に配属された裁判官は,医療事件を多く取り扱うことになりますが,任期(約3年)が終われば異動してしまうため,医療知識や医学的知見については,代理人である弁護士が適切に裁判官に伝える必要があります。
裁判官に医療現場の実情や,当該事案の診療科目に関する医学的知見(診断基準,ガイドライン,術式等)を伝えるためには,カルテや看護記録を提出するだけでなく,医学用語一つ一つをわかりやすい言葉に翻訳したり,医学文献を提出する場合は,アンダーラインを引いて強調したりと様々な工夫をして,なるべくわかく主張することになります。
場合によっては,鑑定という手続で,第三者的な立場の臨床医や教授等の意見をヒアリングして審理に役立てたり,証人尋問で担当医の話を聞いたりしながら,審理に必要な情報を収集しながら,法的責任の有無を判断していくのです。
このように,医療集中部での審理においては,予備知識のある裁判官であるからこそ,代理人である弁護士は,そこを利用して,医療現場の感覚をわかりやすく伝え,違和感のない解決が図れるように立ち回らなければなりません。
以上
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