賠償保険と代理店
今回は、交通事故ではなく、医療事故等の際に登場することになる医師・歯科医師・柔道整復師・鍼灸師等の開業している先生向けの賠償保険についてのお話しです。
これには、いろいろな保険の商品がありますが、大きく分けて、
- いわゆる医療行為・専門的手技や手術等によって生じた事故等をカバーするもの
- 施設賠償といって、それ以外を主にカバーするもの
とがあります。その他にも、雇用賠償や火災保険、送迎等をやっている院ではいわゆる交通事故について目的を事業用とした保険等があります。
言うまでもなく、保険にはカバー範囲があります。そして、約款をよく確認してから契約をする先生はあまりいないと思われますが、《加入している保険》の《カバー範囲外》と考えられる事故が生じた際は、どうしたらよいでしょうか。
当然アウトのケースもありますが、代理店の力が実はここで発揮される場合があるのではないか、私は考えるときがあります。
その理由は、以下のような体験からです。
なぜと思うこと
弁護士目線からみて同じタイプの事件で同じ会社の同じの保険なのに、扱いが違うということによく遭遇します。この点についてなぜ?と思うことがよくあります。
まず、交通事故のように年間の取扱数が非常に多い保険の場合は、ある程度似た事例があり、また、保険会社のコントロールや社員教育としても、ある程度マニュアルが具体的に作成することができることは間違いないと思います。そうすると、交通事故であれば、医師の診断書やその際の職業や収入状況、通院か入院、どんな医療を必要としたかなどである程度賠償請求額も決まってきます。
当然、保険会社としては予算も立てやすく、特段、担当者も困るような場面はクレーマーくらいではないかと思います。また、《代理店》についても、レンタカーの速やかな手配や、飛び石によるガラスの交換の速やかさ、修理対応等でしか活躍の場面がなく、《代理店》によって大きな違いはそこまで生じてこないのではないかと思います。
特に後遺症請求の場合においては、診断書や治療がカギとなり、この点については弁護士の診断書の吟味と書面作成等が非常に大切なってくるのではないかと思います。しかし、医師賠償保険等のいわゆる医療事故系の場合や施設賠償の場合は、具体的なケースによって適用できるか否かがグレーの場合に遭遇する場合が少なくありません。
当然、約款はあります。しかし、その約款の具体的な適用の場面において、明らかに保険会社の担当者が事実関係がわかっておらず、事実関係を確認してから回答しますという場合や、そもそも明らかな誤りをそうとは気が付かずに弁護士に言ってくるケースがあります。
つまり、賠償保険のうち、ケースが少ない場合には、賠償するしないの前に、賠償保険の適用がされるか否かという難題に直面する場面が少なくありません。しかも、医療機関からすれば、賠償保険を適用する場面は請求される場合です。当然受け身なわけですから、相手方からの一方的主張のみで保険適用の有無が判断されてしまっては本末転倒です。
現実に、同じ保険で同じ診療科で同じタイプの事故なのに、保険がすんなり適用になる場合、なかなかならない場合、適用外と言われてしまう場合があります。いうまでもなく、保険会社としては、お金をもらう場合は積極的です。いいこと言って代理店と一丸となって契約をしてもらおうとすることは理解できます。
逆から見れば、いざという時に、保険会社が支払うか否か、保険適用になるか否かが微妙な場合には、保険会社としては、保険を使わない方向に傾斜しがちであることは合理的に考えればその通りだと思います。もちろん、明らかに賠償保険の適用場面の場合はこんなこと考える必要もありません。しかし、実際弁護士として医療事故等に関わっていると、保険適用の場面において保険会社の約款が障碍になることは少なくありません。
この時、《代理店》の力が試されます。
あろうことか、保険会社側に立って、保険が使えないようなベクトルで動いてくる代理店の担当者にも遭遇したことがあります。これは論外です。私はそんな代理店の方とは、すぐに付き合いをやめるべきだと思います。逆に保険適用か微妙なケースで、代理店の方が頑張ってくれてきちんと保険適用になったケースがあります。
このような代理店の方は、そもそも保険会社からも信用されていて、いざという時に頼りになる方なのだと思います。このような代理店の方を探すためには、まずはよくお付き合いしてみて、いざという時にどう動いてくれるかによって判断すべきでしょう。何もしていないのに良い結果になってしきりにアピールだけしてくる担当者もたまにいますが、これもまた論外。
最後に
保険会社の担当者は保険会社の人間ですが、《代理店》は違います。保険会社も我々加入者も両方が取引先ということになります。当然保身のために、保険会社の顔色を窺ったり、保険会社を代弁するようなことをしたくなるのも無理はないと思います。しかし、そうだとしても、加入するのであれば、当然、加入者である我々のために全力を尽くしてくれる《代理店》を選びたいものですね。
お金を取るときだけ頑張る代理店は少なくとも私はお付き合いしたくないし、私はお付き合いしていません。代理店がなんだか頼りない、なんか不信感がある等という場合、早めに変えておいた方がよいです。その他、お困りの事がありましたら、ぜひご相談ください。
以上
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