まず、医療事件と言っても、広い意味の医療事件と狭い意味の医療事件とがあることを抑えましょう。
狭い意味での医療事件とは、【医師や医療関係者の行為によって患者さんが医療を受ける際に、過失によって身体に傷害・死亡の結果が生じたもの】のみをさします。
広い意味での医療事件は、その他、【交通事故��【遺産相続・遺言無効】【医療保護入院・措置入院】【介護】【医療機関の労働事件】【医療関係者の離婚】【開業医の事業承継】【医療関係者の刑事事件】などの事件です。これらの事件では、医師の診断書やカルテ、医療知識が前提として必須です。
そして、医療事件が刑事事件となるのは、狭い意味での医療事件のうち、過失の程度の重いものをさすとイメージしておいていただければ大丈夫でしょう。
狭い意味での医療事件は、基本的には、保険会社が入ります。なぜなら、医療機関は賠償保険に入っているからです。しかし、【保険によって回復されるのは金銭面だけ】であり、【医療機関の名誉や社会的信用はなかなか回復しません】し、【怪我や死亡の結果を伴ったご本人やご家族の気持ちや生じた結果も回復しません】。
医療機関側の代理人弁護士としては、金銭面を解決するための示談屋としてではなく、医療機関の信頼を失わせないような配慮と、気遣いが求められます。そのためには、医療について弁護士が熟知していることが必要です。
私は、そのような弁護士を育てていければと活動していますが、なかなか医療について真剣に取り組む弁護士は多くありません。これからの高齢化社会を迎えるに当たり、医療は必須のインフラになりますから、そのような弁護士が増えて各医療機関に渡り切らないと大変なことが起き続けます。
安心・安全な医療体制を作るためには、司法の力が必須です。また、そのためには、弁護士や裁判官、検察官が医療についてしっかりと正面から取り組む必要があります。
そのような努力を弁護士がしていけば、医療機関が刑事事件を起こすというような程度の重い医療事件は撲滅することができるのではないか、と思っています。医療においては、安心・安全こそブランドとなるのが当たり前の時代になるよう、頑張ります。
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