広告規制についての分析と対策+CtoCセミナー
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長文かつちょっと難しいかもしれませんからご興味ある先生のみどうぞ。
ちょっと毛色の違う投稿ですが、私は現在日本医科大学医学部大学院で社会医学の研究をしているので、そのような目線で広告規制について、もっと言うと、業界のCtoCセミナーがはびこっている現状についてなぜそのようなセミナーに行く先生方が後を絶たないのかについて分析しました。
広告規制とBtoCビジネス
言うまでもなく、BtoBとは会社企業から会社企業に対するサービスのこと、BtoCはそのサービスの相手方が一般消費者であるということです。
しかしながら、現在、医療業界、特に接骨院業界ではCtoCが通常に行われている。これは、一般企業では絶対にありえないことです。
これは、医療業界が究極的に医療関係者と患者さんとの情報格差があることが主因と考えられます。
そうすると、B(接骨院)からC(患者さん)に対して情報提供をして集客しようとすると、Cである患者さんは知識や専門知識がないために「わかりやすい」知識を提供して来院の動機付けをしてもらう必要が出てきてしまいます。
ここが過剰になり、宣伝合戦や比較広告合戦になっている現状については、先生方がよく知っている通りです。
すなわち、どんな良い技術やどんな良いサービスを持っていても、Cである患者さん側にそのようなことを区別・判別する知識経験がないために、結局Bである接骨院側としては、広告でCである患者さんに自分の接骨院を知ってもらわないとやっていけない→広告宣伝合戦となる、ということになります。
だからこそ、国は医療系資格については数を規制し、広告宣伝合戦にならないようにしなければならない義務があり、しかしながら国がその義務をきちんと守っていないからこそ、現在の状況になっているということではないかと私は思います。
そこで、いまさら広告規制を強化しますというのは、これまで国がきちんとした政策をとらず後先考えてなかったのがいけないのに、その責任を接骨院に転嫁することにほかなりません。
しかしながら、実際にこのような状況になる前に業界団体が動かなかったこともまた事実です。実際に、加計学園の獣医学部でも言及されていましたが、医師や獣医師は医学部や獣医学部の新設がこれまで数十年にわたり規制されていました。「国は暴走する」というのは歴史上明らかである以上、業界団体が一枚岩になって頑張らなければ、その秩序は害されてしまうのです。
さて、そうはいっても、こうなってしまった以上、どうしたらよいか。Bである接骨院としては、広告規制とうまく付き合いながら、自費診療や接骨院+αを導入していくべきでしょう。
また、その規制が及ばないBtoBビジネスに突入していくこともまた考えられます(広告規制はあくまでCである患者さんを保護するための規制ですからBtoBであれば規制は対象外です。
前者について、自費診療や接骨院+αについては、いわゆる柔整師法の規制の及ぶ範囲ではありませんが、消費者保護法や著作権に関する法律、その他保険診療とは異なり適用される法律は多々あります。
また、窓口で支払う金額が(保険に比べて)多額になるため、クレームなどの対処法や接客の方法にまで細心の注意が必要です。
弁護士として日々医療機関のクレーム等を対処している現状からすると、そもそも医療安全体制に対する意識があまり高くないではない医療機関が少なくないものと考えます。
医療安全体制の構築をすることは医療訴訟予防やクレーム予防になり、接骨院のブランド化につながることは私はこれまでいろいろなところで話してきています。
また、医療安全体制の構築には、有事の際の初期対応の方法もまた、含まれます。多くの裁判になっている医療訴訟は、初期対応で下手を打ってしまったことから長い戦いになっているという現状があります。
そして、医療安全の道は一日にしてならず。
よくどうしたらよいですか、と結論を求めたい声を聞かれますが、答えは「法律的なものの考え方を学び続けてください」です。
まずはわからないことに気が付けるようになる、気が付いた場合には弁護士に質問をする、そして、実践してまたわからなければ弁護士に質問をする、この繰り返ししかありません。
後者についてBtoBについては、この後詳細を記載しますが、残念ながらCtoCになってしまっている現状があります。
BtoBのはずがCtoCセミナーになってしまっている現実
上記まではBは接骨院、Cは患者さんでした。ここからは、BtoBの後ろのBが接骨院、CtoCの後ろのCが接骨院という意味になります。
さて、業界内でセミナービジネスが流行しています。柔整師の先生に限らず、コンサルタントや弁護士に至るまで、あの手この手でセミナーを実施して、高額なセミナー代金を得ていることがあるようです。
もちろん、その価値が本当にあるのであれば問題ありません。
しかし、そうでないセミナーも少なくないのが現状です。
BtoBのサービス提供側のBについて検討すると、基本的に、他人に何かを教えるためには、「プロ」であることが求められます。
知識については、ネット社会である以上、現在は誰でも手に入れることはできますが、それを理解するためにはそれなりの経験が必要となります。
いわゆる国家試験に合格するレベルはこの理解する段階です。
では、たとえば国家試験に合格したばかりの柔整師はすぐに使い物になるでしょうか。答えはNOですね。
基本的知識を理解したことを前提として、しっかり指導者のもとで訓練しなければ、「身につけること」はできません。
そして、「その分野のことについて身についていること」=プロです。お金をもらうことができるのはこの段階になってからです。
体験談を語るなどのセミナーなら良いですが、何か有用な情報をセミナーするという場合には、プロでなければなりません。しかし、現実そうなっているでしょうか。
柔整師の場合は、まずは、実際に技術のある先生が技術系のセミナーをすること、これは王道のセミナーといえるでしょう。
柔整師は、柔道整復による治療をすることのプロです。
その技術をBtoBで同業者にセミナーをしていくことは非常に意義のあることと考えます。
また、実際に経営者として成功している先生方がそのご自身の成功体験談を語るセミナー、これも意味があるでしょう。
成功している先生が成功するための心がけ等を語ることもまた意味のあることと思います。
他方そうでない先生がセミナーをしている場合もあります。
ここで気を付けなければならないのは、前提としてしっかりとして柔整師としての技術や経験がなければ、BではなくCに過ぎません。
また、それを聞く先生についても、ある程度知識経験を積んだ先生でなければCに過ぎません。
逆にいえば、Bである先生はBでない柔整師の先生がわかるでしょうが、Cである先生は見抜けないことにになります。
かくして、CtoCセミナーがはびこる原因となってしまうのです。
したがって、セミナーを聞く場合には、Bの先生のセミナーなのかCの先生のセミナーなのかを見分けることがまず大事です。もしCの先生のセミナーであれば、時間とお金の無駄遣いに過ぎないからです。
次に、法律的なセミナーについて、弁護士が開催している場合もあります。しかし、その多くは弁護士事務所の集客に利用されているだけです。
多いのは交通事故系のセミナーです。今食っていけない弁護士が交通事故の集客に躍起になっています。
ここでは、完全にBtoC=弁護士to接骨院となっています。
しかし、私は弁護士業界を見渡すと、交通事故の集客に躍起になっている事務所はごく一部に限られると思います。
交通事故は医療知識が前提として絶対必要であり、かつ、法律知識も必要です。
多くの弁護士の先生は医療については素人ですから、きちんとやろうと思えばカルテを読み込んだり医師とやり取りするだけで手いっぱいになり、費用対効果が非常に悪いという話をよく聞きます。
私も弁護士の先生から後遺症についてよく質問を受けてお手伝いをすることが多いですが、きちんとやろうとすると、もらえる弁護士費用のわりに手間ばかりかかって報われないというのが弁護士の正直なところです。
にも拘わらず、交通事故で集客する弁護士がいるのは、数を多く回すことを中心に考えているものと考えられます。
弁護士も、事件は、基本的に手を抜こうと思えばいくらでも手を抜けます。本来相手を説得しなければならないのにこともあろうに自分の依頼者を説得してあきらめさせる弁護士も少なくありません。
全ての弁護士がきちんと一つ一つ丁寧に事件をこなしているという前提は、宣伝広告をバンバン打っている弁護士についてはもはや崩れているのではないでしょうか。
もちろん、事件を受任する「前に」厳しい見通しを伝えるのはむしろ良心に従い正しいことです。
しかし、事件を受任する際にはいいことばかり言って、事件を受任して着手金や相談料等をもらった「後に」なってから厳しいですね、という弁護士はどうなのかなと思います。
もちろん、精いっぱいやってダメであればよいでしょうが、あまりに数多くの事件を受任していれば、一つ一つにじっくりと取り組むことは現実的にできないというのが弁護士の本音のはずです。
なので、多くの弁護士事務所は交通事故についてはご紹介があれば受けますが、積極的に集客したりはしないというのが現状ではないかと思います。
次に、コンサルタントについてです。
コンサルタントについても月にいくら売り上げた等のキャッチフレーズ等でセミナーをしているケースを多く目にします。
しかし、コンサルタントは医療機関を実際に経営したことがあるのでしょうか。あるわけありません。また、何のプロなのでしょうか。
弁護士であれば医療に関するあらゆる法律、医師であれば医療機関の経営、税理士であれば医療機関税務、社労士であれば医療機関の社会保険労務、行政書士であれば医療機関の代書の経験を積んでいればプロといえます。
しかし、コンサルタントはそのいずれも経験もないはずです。
それなのにセミナーをするというのはどういうことでしょうか。
私もお付き合いのあるコンサルタントの方はたくさんいます。
しかし、その多くの方は、医療機関の先生方に傾聴し、何かあればすぐに駆け付け、弁護士や税理士等の専門家と「つなぐ」ことに全力を注ぐ方ばかりです。
決して法律相談まがいのことや税務相談まがいのことはしません。「一緒に考える」というのがその仕事と皆口をそろえて言います。
すなわち、コンサルタントがセミナーを開催できるとしたら、そのような先生方がどのような悩みがあるかを分析し、適切な専門家を呼び、セミナーを開催することにつきます。その「つなぐ」という意識を持ったコンサルタントは非常に医療機関にとってプラスに働くことでしょう。
私も弁護士ではありますが、自分の専門外のことついては、専門の信頼できる弁護士の先生につなぎますし、税理士でもありますが、実務的なことは税理士の先生につなぎます。
整形外科の患者さんが中耳炎を見ないことと同じことですね。医師は当然紹介します。
柔整の先生は対診しますよね。
このように、自分が何の専門、すなわち、Bであるかをきちんと分析したうえで、セミナーをしないとCtoCのセミナーにつながってしまいます。
まとめ
業界はさらに厳しい時代に突入していくことでしょう。当然「情報」は必須です。しかし、「情報」は使えるものでなければならず、真に正しい情報でなければ意味がありません。正しくない情報は体験談等として正しくない情報として受け止めて役に立てることはできますが、なかなかその情報の峻別をすることは難しいことでしょう。
今、何をなすべきかも大事ですが、「何をなすべきではないか」という視点も併せ持ち、こん、接骨院の受難の時代を乗り越えていきましょう。
以上
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