個別指導の件数は増加傾向にあります
昨今、個別指導の件数は増加傾向にあります。個別指導に関する相談は法人全体として年間数十件を数えます。
当法律事務所の弁護士は数多くの医療機関の個別指導に帯同をしておりますが、これまで当法人の弁護士が帯同して、監査に移行したケースはありません(個別指導に帯同するのは顧問先医療機関で日常的に体制チェックをしていたケースに限ります・2020年4月現在)。
このことからも、日頃から弁護士とコミュニケーションをとりカルテや診療報酬の請求が適切に行われる体制を構築しておくことが重要だと言えます。
個別指導を機会にご紹介等で顧問契約をされる医療機関はここ数年、年間10件以上あります。その際に、強調することは、個別指導を乗り切ることが目標ではなく、個別指導の結果を踏まえて、適切な診療報酬請求の体制に切り替えることが大切だということです。
残念ながら、報酬の取りやすい形を前提として医療体制を作り上げている医療機関は少なくありません。しかし、思考停止した同様の請求パターンはAIによって分析され、重点的に個別指導に呼ばれることが続いております。また、接骨院分野は特に厳しい個別指導が続いており、看板を下ろすほとんどが個別指導の自主返金に耐えられずに、という話も数多く聞きます。
医科や歯科についても、昨今厳しさを増しています。診療報酬が高額であればあるほど個別指導に呼ばれるケースが増えており、また、新規個別指導(集団指導ではなく)でも、返金やひどい場合は、保険医取消等の事例も発生しております。
再指導事例の増加
再指導事例も増えており、1年間憂鬱に過ごされる先生と共にするケースも増えてきました。個別指導では、原則として1年以内の任意の2か月のカルテを指定されての部分について個別指導がなされることが多いため、再指導は1年後の場合が多いからです。
個別指導の結果には概ね良好、経過観察、再指導の3つが確認されており、経過観察でも1年ないし数年後に呼ばれるケースは非常に多くなってきています。
もともと顧問であったところは、ご指導させていただいているので、再指導になったケースはこれまで1例もありません。他方、個別指導を機会にご紹介で顧問契約されたケースはその個別指導が終わってからの1年間が大切です。なぜなら、一回指導を受けたにもかかわらず、改善がなかった場合には、厳しい結果となる可能性が高まるからです。
また、個別指導には弁護士しか帯同、つまり同伴が認められていませんが、弁護士が帯同したとしても、その後の体制を切り替える姿勢が非常に大切になります。経営者の覚悟がないと最悪の場合、保険医療機関として診療ができなくなる事例もこれから増えていくことが予想されます。
今一度、患者のための安心・安全な医療を提供する姿勢を前提として、もちろん、経営的な観点をしっかりと前提としながら、いつ個別指導に呼ばれても問題ない体制を作っていきましょう。安心・安全な医療システムの構築をしていれば、個別指導等難なく乗り切れるはずです。