なぜ刑事事件で医療の要素が重要なのか
それは、刑事事件においては、医療的な切り口が必要になる場面が多々あるためです。生命・身体に関する罪は多くが医療に関連するもので、例えばその結果が傷害か暴行にとどまるものかの判断に、医師の意見書が登場してきます。これを吟味するためには医療知識が必須となります。
また、故意があるか否かについての判断で、その創の性状等から、医学的な分析が必須となります。
このような状況の下で私は、弁護士として大きく2つの立場で刑事事件に携わっています。1つは加害者側に立っての刑事弁護、そしてもう1つが被害者側の示談交渉です。
医学的証拠の誤りについて迅速・正確な反証が可能
死亡推定時刻が問題となる事件等は少なくありません。この場合、ある時刻にすでに亡くなっていたのか、まだ生きていたのかが争点となったケースがありました。その結果によって刑事責任が重くもなるし、軽くもなります。
また、過失罪が規定されていない犯罪では、故意が立証されなければ罪に問われない(無罪)ということもあり得ます。
しかし、鑑定書や鑑定証人の証言が誤っていることに気が付かないまま裁判が進行するという事態を防ぐことは、非常に重要なことなのです。
否認事件の場合にはなおさら、医学的証拠の誤りについて迅速かつ正確に反証を行い、被告人の主張の正当性を示すこともできます。また、被疑者の責任能力が争点となるケースなどは、精神鑑定の結果を正しく理解するためにも,精神科医と話しができる程度の医学知識知識があることは有利な要素といえるでしょう。